『管状炉・チューブ炉用の発熱体(ヒータ)種類と特性について』
一般的な雰囲気加熱の発熱体種類や特徴などを一部ご紹介させていただきます。
発熱体の種類 | 最高使用温度 | 発熱体 | ヒータの組み込み状態 |
定抵抗発熱体 | 1100℃ ~1300℃ |
ニッケル・クロム線、鉄・クロム・アルミ線など | パネルヒータ。熱板組み込み。ボビン巻き付け等。 |
炭化珪素発熱体 | 1500℃ ~1600℃ |
SIC、シリコニット発熱体など | 断熱材内部に差し込み。 |
二硅化モリブデン発熱体 | 1600℃ ~1750℃ |
MOSI2、パイロマックス- スーパー | 断熱材内部に差し込み。 |
定抵抗発熱体
管状炉・チューブ炉によく使用される定抵抗発熱体はニッケル・クロム線、鉄・クロム・アルミ線など、製品名としては、ニクロム線、パイロマックス(リケン環境システム製)、カンタル線(サンドビック株式会社製)などが一般的です。
そのままでは、管状炉・チューブ炉のヒータとして使えないので、コイル状に巻いたり断熱材に固定したり、耐火物に入れたり、熱板に入れたり、電気用ボビンに巻いたり、電熱用クリートに入れたり、様々な方法でヒータを固定します。
発熱体単体での最高温度は1400℃と言われていますが、通常の管状炉・チューブ炉として使用する場合は断熱材で断熱して使用します。制御温度はヒータ(発熱体)その物の温度を測定出来てはいないので、炉の制御温度を1400℃にして使うことが出来ません。
利点:省電力で昇温可能。
抵抗変化が少ない為、特別なサイリスターなどが必要なく使用出来る。
ヒータがまんべんなく入れられる為、円周方向の温度分布が良い。
欠点:設計による性能差が出やすい。
出力を高くすると、設計が難しくなり断線しやすくなる。
炭化珪素発熱体
管状炉・チューブ炉によく使用される炭化珪素発熱体は、最高温度1600℃位と言われていますが、電極の接続部が有るので、管状炉・チューブ炉としての設計の自由度が少ないです。
利点:低温から高温まで昇温可能。
出力密度が高いので、出力が高く出来る。
欠点:電極の接続部が有るので、設計の自由度が少ない。
抵抗値の変化が大きいので、制御が難しく定電力タイプのサイリスタ(電力調節器)による制御が必要。
二硅化モリブデン発熱体
二硅化モリブデン発熱体は、最高温度1600~1800℃位と言われていますが、電極の接続部が有るので、設計の自由度が少ないです。
利点:高温まで昇温可能。
出力密度が高いので、出力が高く出来る。
欠点:電極の接続部が有るので、設計の自由度が少ない。
抵抗値の変化が大きいので、制御が難しく定電力タイプのサイリスタ(電力調節器)による制御が必要。
低温域が苦手な為、一気に高温までの昇温が必要。
管状炉・チューブ炉のヒータと言っても色々なタイプが存在しますが、種類や特徴などを一部ご紹介させていただきます。
『定抵抗発熱体のヒータの種類(組み込み方法)と特徴について』
定抵抗発熱体は組み込み方法(固定方法)がいろいろ有る為、種類や特徴を一部紹介させて頂きます。
パネルヒータパネルヒータはセラミックファイバー製の場合、最高温度1000℃~1200℃位と言われていますが、 利点:軽量、省電力で高温まで昇温可能蓄熱が少ない為、昇温速度が速く出来る 欠点:蓄熱が少ない為、出力を大きくすると昇温制御が難しく温度調節器による制御が必要蓄熱が少ない為、暴走しやすい。 |
管状炉・チューブ炉用パネルヒータはひとくくりに出来ない位、様々な製造方法があります。 一例をあげたいと思います
① 断熱材を溝加工して後入れでヒータを組み込む利点:低価格で製作可能一体で成型する特殊な設備では無く、一般的な加工設備で製作可能な為。 欠点:高温での使用時に溝の中でヒータが動いたり寄ったり移動しやすいヒータの遊びが大きすぎる為。■ |
② 断熱材にヒータをピン止めして固定する利点:低価格で製作可能溝もいらない為、一般的な加工設備も不用の為。 欠点:高温での使用時にピン止め部以外の部分のヒータが動いたり寄ったり移動しやすい固定が不十分の為。 |
③ 断熱材にヒータを一体に成型する利点:高温での使用時にヒータが動きにくいヒータ位置がずれにくく設計時の性能が長く維持できる為、高性能設計が可能。 欠点:製作コストが高くなる専用の設備が必要な為、製作コストがかかってしまう。 |
熱板ヒータ熱板ヒータは、最高温度1000℃~1100℃位と言われていますが、一体成型出来ないので、熱板に後入れでヒータを組み込みます 利点:ヒータ交換が可能蓄熱が多い為、急な温度変化が起きにくい 欠点:ヒータ交換した人の技術による性能差が大きい。蓄熱が多い為、急な昇温が難しく電力が必要 |
巻き付けヒータ巻き付けヒータは、炉芯管に直接巻き付けたり、巻き付けた物をヒータにして使用したりしますが、巻き付ける間の選定(性能)によっても特徴が変わります。 利点:細かい微調整をして組み込む事が可能。炉芯管に直巻きすると、炉芯管内の温まりが早い。 欠点:巻くのに職人技が必要なので、同じ物を作る事が難しい。炉心管がアルミナを使用すると割れやすい。 |
管状炉・チューブ炉の故障・ヒーター断線の原因について
(管状炉・チューブ炉ヒーター断線の原因についての当社テストでの考察)
管状炉・チューブ炉が故障する場合には様々なパターンがあります。
① ヒーターが金属(ゴミや粉末)と反応して断線する
ヒーターに接触した金属の融点が低い場合、ヒーターの表面温度が金属の融点を超えて溶け、反応して断線する。(この場合は600~700℃程度でも発生の恐れあり)
② ヒーターと金属が直接触れて断線する
ヒーターと金属が直接触れる様な設置をしている場合に、ショートして断線する。
③ ヒーター温度が上がり過ぎて断線
熱電対のセットし忘れや、熱電対の差し込み深さの不足や、その他の原因で、ヒーター温度がヒーター融点を超えてしまい断線する。
④ ヒーター寿命で断線
ヒーターが正常に使用されている場合でも、ヒーターの表面温度が1000℃以上で(炉内温度では無くヒーター表面温度)徐々にヒーターが消耗していくので、細くなっていき限界を迎えて断線する。
⑤ ヒーターが偏り断線
ヒーターが使用していくにつれ、飛び出してきたり垂れてきたりして、位置が正常位置からズレる事により断線する。
⑥ 断熱材のひび割れが進行して崩れてきて断線
ヒーターが使用していくにつれ、ひび割れが進行して崩れてきた場合、ヒーター位置が正常位置からズレる事により断線する。
⑦ 制御出来ずに断線
ヒーターの設計と温度調節器や熱電対の総合的な部分になりますが、制御温度(表示温度)との差が大きくなりすぎて、実際はヒーターが高い温度にもかかわらず、低い温度と認識していて断線する。
*使用条件や設計により異なる場合もありますので、一般的なヒーターの故障原因の見解です。